著者はドルー・エリック・ホイットマン氏。
ブログで前に取り上げた、広告の教科書とも言っていい現代広告の心理技術101も彼の著作。
現代広告の心理技術101が「広告の教科書」なら、
こちらのクロージングの心理技術21は「対面セールスの教科書」と言ってもよいでしょう。
amazon.comのレビューでも、4.7という高い評価を得ている非常に実用的な本です。
髪を切る、本当の理由 -恥を回避したいという欲求-
「広告の教科書」を書いた消費者の頭の中を覗く天才、
ドルー・エリック・ホイットマンはこんなことを言っています。
「もし私が誰かに、髪を切る理由をきかれたら、”髪が長くなった”とか、”妻に言われた”とか、”手入れが厄介になってきた”とか言うだろう」
しかし彼が言うには、これは本当の理由ではないそうです。
彼が髪を切る本当の理由はこうです。
「私に髪を切りたいという気持ちにさせる本当の理由は、私が人前に出たときの印象を気にしているから。変な髪型で歩き回ったら人はどう思うだろう?と心配だからだ」
つまり、最初に紹介した理由はあからさまな虚栄心を隠したかったり、あるいは批判にさらされて自分が傷つくようなことを避けたい、という思いから発されているのだと、彼は言います。
この文章を見たときにはっとしまいた。わたしがかつらを付けた理由も、地毛の手入れが面倒だからではなく、自分でも自覚できる、変な髪型で歩き回ったら人はどう思うだろう?と心配だったからです。
モノを買いたい本当の理由は、隠れてる
このことから学ぶべきことは、人間がある行動を起こす時、その根底には
人に言いたくない隠し事とも言える「本当の理由」があるということ。
そして、何らかの形で見せられるまで本当の理由が消費者自身でもわかっていない場合があるということ。
それを知ることで、わたしがかつらを買ったように、消費者の無意識を、売りたいモノの価値やメリットに結びつけることができれば、セールスはもっと楽になるでしょう。
逆に言えば、いくら身だしなみをパーフェクトにしても、おしゃべりのスキルを身に着けても、無意識である「本当の理由」にクロージングできなければ別の会社やライバルに流れて行ってしまうという事。
消費する側は「~したい」「~でありたい」という本当の気持ちを心の中に秘めています。
対面セールス、電話、インターネットのいずれであろうであろうと、そのことを常に意識しておくのが大事ですね。
本の中のエピソードを少し紹介 ー一貫性の法則ー
本文より「一貫性の法則」が書いてあるエピソードを紹介します。
もし、話の順序を逆にしていたらどうなったかを考えながら読まれて下さい。
コン、コン、コン。
数件先の家に住む8歳の可愛い男の子
ドアをのぞき穴からのぞいてみるが、何も見えない(彼は背が小さい)。
ドアを開けるとこの男の子はあなたの顔の前にクリップボードを
差し出して、こう言う。
「こんにちは。僕の学校のいじめを
やめさせる署名をお願いできませんか」
もちろんあなたは署名する。子どもがいじめに遭うのを望む人間はどこにもいない。
体が小さいからいじめられやすいんですと
彼は言って、あなたの心をぐいとつかむ。
あなたはすぐに署名をし、信念の道を進む。
クリップボードを受け取ると彼はこう言う。
「わぁー、どうもありがとうございます。僕や僕みたいに小さな子には
すごくありがたいです。
あと『僕をいじめるな!』ってプリントしたTシャツを作るために
3ドル寄付してもらえると嬉しいんですが。たった3ドルなので…
ありがとうございました」
なぜこの小さな男の子は3ドルを寄付させることに成功したのか?
彼は、このお願いの中で「一貫性の法則」と呼ばれる心理を使っています。
彼は最初にいじめに対する相手の価値観を明らかにさせました。次にいじめ撲滅のための少額の寄付を相手に求めました。
(もし、要求の順序が逆ならば、寄付の話で断られていたでしょうね。)
この要求を断るのはとても大変です。
もしここで断れば、さっき自分が言ったことは嘘で、自分の価値観に嘘をつくことになるので、寄付しないわけにはいきません。
彼はこの法則を使って、本来なら得られない寄付を募ることに成功しました。
営業に例えれば、本来なら売れるはずのないものを簡単に売ることができた。
このエピソードのポイントは
見込み客の一貫性に訴えて
買わないことに
居心地の悪さを感じさせる
こと。
同じ場面に遭遇したら
きっと分かっていても断れない。
そういう体験は身近にもあります。たとえば・・・。
応用編 予言の自己成就との併用
よく、資格を取ったりするために通ってから言うのではなく、「周りに資格をとることを宣言する」といったテクニックが挙げられます。
これは人は自分の言った通りのことを実現されると信じ込んでしまう「予言の自己成就」を用いた心理テクニックですが、
あれも、上で紹介した「一貫性の原則」「落ちてしまうことで恥をかきたくないという無意識のために勉強する」が根本にあります。
クロージングの心理技術21 ー対面セールスの教科書ー
この『クロージングの心理技術21』ではこのような身近な体験談を交えつつ、消費者の心に接近してしまう数々のクロージング術を余す所なく教えてくれています。
消費者目線でいけば、
無意識のうちに購買行動に誘導される「ずるい」テクニックが書いてある
とも言えます。
セールススキルを高めたいという方だけでなく、対面セールスでつい買ってしまうかたはぜひ一度ご覧になってみてください。

たった一行で行動をあやつる「現代広告の心理技術101」
姉妹本として、たった一行での行動を変えてしまった「現代広告の心理技術101」も紹介。
「クロージングの心理技術」が対面セールの教科書だとすれば、こちらは「一行広告の教科書」ともいえます。
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