この記事では、商業簿記2級、FP3級のヒカルが、
という疑問について解説していきたいと思います。
【追記】妥当な着地点になったようです
あまりに反対意見が殺到したので、通達の内容が大幅に変わりました。記事にしましたのでご覧ください。
2022年の8月1日に、国税庁が以下のような通達を出しました。内容かいつまむと、副業の売上が300万以下なら事業所得ではなくて雑所得とするよという通達でした。[sitecard subtitle=前に書いた記事 url=https:[…]
問題の発端→国税庁の基本通達
2022年の8月1日に、国税庁が以下のような通達を出しました。
削除されていたので、分かりやすく説明してあったものに差し替えています。
内容(PDF注意)をかいつまむと、
という通達です。副業をしている多くの人に影響を及ぼす通達だったのでトレンドになるほど大きい反響を及ぼしました。
よくある質問
Q1.開業届を出してるから事業所得としていいのでは?
関係ありません。年間の売り上げが300万以下なら問答無用で業務に係る雑所得になります。
Q2.売上か利益か基準が良く分からない
売上が300万以下です。利益ではありません。
Q3.売上と利益の違いって?(ちょっと長め)
なるべく専門用語を使わないで説明します。
売上から仕入額を引いたものがを売上総利益、粗利とも言います。一般的な利益が指し示すのは大体これのことです。
僕たちが買い物で支払う金額が店の売上、店が商品を仕入れた金額を仕入れ額と考えると分かりやすいと思います。
売上総利益から営業に関わる経費を引いたものが営業利益といいます。
店のたとえでいくと、店の光熱費、人件費が該当します。
営業利益から事業に関係にはないけどかかっている経費や収入を足したり引いたりしたものを経常利益といいます。
店のたとえでいくと、店が関係会社の株式を持っていて配当金を受け取ったり(小売業というメインの事業の収入とは関係がないですよね)、借りているお金の利息を支払ったりすることが該当します。
経常利益から事業に関わる突発的な出費や収入を足したり引いたりしたものを税引前当期純利益と言います。
店のたとえでいくと、古くなった店舗を壊したときにかかる費用や火事で店がなくなってしまった時の損失、店舗を別の人に売却したときの収益が該当します。(いずれも日常的に起こることではありませんよね)
税引前当期純利益から税金(法人税や事業税)を引いたものを税引後当期純利益といいます。
法人税や事業税が無い場合税引前当期純利益=当期純利益を指します。
Q4.↑の説明と事業所得・雑所得がどう関係あるの?
上の説明の続きですが、事業所得=当期純利益、ではありません。
青色申告の場合は当期純利益から最大65万を控除することができます。
雑所得に該当する場合は当期純利益=業務に係る雑所得として申告する金額となります。
仮に当期純利益がマイナスになった(当期純損失)場合、他の所得と合算して差し引くことができます(損益通算といいます)。
となります。
雑所得の場合、事業が赤字(当期純損失)だっととしても他の所得と合算して差し引くことができません。
(その他雑所得に属するものと合算することは可能)
Q5.雑所得だと費用(家事按分)は認められない?
50%以上事業として使っているか、「その必要である部分を明らかに区分することができる場合には」認められます(国税庁:家事関連費(第1号関係))。客観的に文章で分かるように残しておくことが大事になります。
Q.1~Q5をまとめて欲しい
開業届を出していようが業務委託されていようが年間の売り上げが300万以下で正業の所得を超えない場合、問答無用で2022年の確定申告から業務に係る雑所得として申告しないといけない確率が極めて高くなります。
雑所得なら65万の特別控除が受けられないので実質増税になります。雑所得でも費用(と家事按分)は認められますが、事業所得のとき以上に区分できる根拠をしっかり残しておかないといけません。
Q6.「主たる所得」って?
いちばん稼いでいる所得のことです。副業<<正業の場合は給与所得が主な所得になります。
フリーランスで給与所得が0の場合、「主たる所得」が事業所得になるため、年の売り上げが300万にいかなくても影響はありません。
Q.7雑所得になるとどんな影響があるの?
まず、青色申告の特別控除の65万が使えなくなります。次に事業で赤字が出てても給与所得と相殺できる損益通算が使えなくなります。
雑所得か事業所得かの判定には仕入額は関係ない(Q3参照)ため規模の大きい物販系の副業は有利ですが、仕入額が低くなるプログラム系やデザイン系を副業にしている人の場合、副業の規模で売上げ300万を上げるのは困難だと思われます。
Q8.そもそもなんでこんな通達が?
一つ目に、老後2000万の問題を受けて副業をする方が増えたことで、副業してる人が増えたこと。
二つ目に、事業所得か雑所得かの区分が曖昧であることを逆手に取って事業実態がないのに赤字だけを計上して損益通算、税金逃れをする人が多くなったことが要因だと思います。
Q9.損益通算だけ塞げばいいんじゃないの?
損益通算が使える他の所得(不動産所得・山林所得・譲渡所得)に飛び火するのでしたくないんだと思います。
Q10.影響を受ける人って?
主な所得が他にあって副業している方。要するに副業してるサラリーマン。
完全に独立していて仕事を請け負ってるフリーランスで、主な所得=事業所得であれば関係ありません。
マイナスの影響が大きいのが、
- 給与所得だけでは暮らしていけないから副業を始めた方
(給与所得150万、副業所得100万でも雑所得になります) - 給与所得が「課税される所得金額」が税率変更の境目にある方
(給与所得320万、副業所得が50万のかたの場合、雑所得になることで税率が2倍になります。)
Q.6からQ.10をまとめて欲しい
「主たる所得」とは最も稼いでいる所得のこと。給与所得より事業所得が十分に大きい、あるいは事業所得だけしかない人は関係がない。
仮に事業所得から雑所得になると、最大65万の控除と損益通算が使えなくなる。おそらくこの通達が出されたのは、副業している人が増えたことと、損益通算を悪用する人が出たことがきっかけ。損益通算そのものをふさいでしまうと他の所得にも影響が出てしまうからやりたくないのも理由だと思われる。
特に損をするのは、給与だけでは暮らしていけないから副業を始めた人と、副業してて給与所得が税率変更の境目にある人。
O.11 でも、あくまで基本通達だから決定ではないのでは?
国税庁の基本通達でパブリックコメントまで行きついたものは、慣例通りならほぼ通るとされています。
つまり、2022年度の所得から副業で年間300万の売り上げがない人は雑所得として申告しないといけなくなる確率が極めて高いです。
Q.12 反証できれば事業所得になるんじゃないの?【つばさ追記】
給与所得が200万、事業の売上が200万のようにほぼ半々で、事業の売上が将来的に300万になりそうな人であれば反証できるかもしれません。
ですが、多くの方が対象になる給与所得が主な人の副業、会社勤めの片手間でやっているような副業の場合は難しいと思います。
給与所得と事業所得の割合が微妙/今年だけ売り上げが落ちた/今年だけ給与が多かったのだけどどうしたらいい?
税理士の先生に相談されたほうが良いです。私見ですが理由を書きます。
- もし後々に修正申告が必要になった場合、過少申告加算税が加算される
- 微妙な人ほど税務署からの「お尋ね」が来やすくなる
- ②の状態で不動産や土地の相続が重なって急激に所得が上がった場合、目立つのでますます「お尋ね」されやすくなる。
先生に払う費用よりも罰金としての税金のほうが遥かに重いので、微妙な場合は相談されることを強くお勧めします。
確定申告の時期に税務署に相談に行く、というのもアリですが、その時に担当している税理士の先生がアフィリエイト等の広告収入について詳しい知識を持っているとは限りません。
税理士の先生を紹介しているサービスを経由することで、そういったミスマッチを防ぐことができるかも。
参考までに、「日本税理士紹介ネットワーク」を載せておきます。
・独立や新規開業、新規法人設立等の直前直後
・個人事業の売上が大きくなり、税務・会計の処理が多くなってきた
・フリーランスで活動してて、青色申告を適用して確定申告を行いたい
・Webサイトや動画配信で広告収入を得ている
・通販事業をしている
そういった方向けの税理士紹介サービスを提供するサイトです。
サービスの利用は無料で。成約しても紹介ネットワークへの支払いは発生しません。
発生する支払いは税理士と契約した後に、先生に報酬を支払うだけ。
過疎地域や離島などに関しても、オンライン会議、電話、メール、
郵送等で応対可能な先生とタッグを組んでおり、どこでも対応できるのが強み。
もし税金関係に不安があれば相談してみることをオススメします。